記者の山縣さんは何度か「むゆうじゅ」の公演を観てくださっていて、何年か前にもお寺の花祭りの舞台を取材してくださいました。今回はむゆうじゅを始めたきっかけや、私の脚の病気についての話をまとめてくださいました。
「手術しないと寝たきりになりますよ。踊りなんかとんでもない。」インド舞踊オディッシーダンサーの福島まゆみさんは7年前、脚の痛みで訪れた病院で先天性股関節脱臼と診断され、医師の言葉に目の前が真っ暗になった。
福島さんは俳優を経て、身体を使った表現がしたいと舞踊を始めた。寺院に奉納する舞として、曲線的な動きが特徴のオディッシーをインドに通い習得した。舞踊は仕事。踊れなければ生活もできない。
母も同じ病で6回手術をしており、遺伝の可能性はあった。進行性でほとんどの患者は手術するが、手術せずに回復した人たちから話を聞いた。「病気や自分と向き合っている」共通点に気付き、自分も治るはずと考え手術は避けた。
しかし、疲労骨折などで歩けなくなり、車椅子生活となった。痛みが絶えないなか、発症しない道はなかったか、親や子との関係など考え込んだ。うつ気味となり、奄美大島の友人宅で2か月ほど過ごした。毎日泣いたが、「考えていてもしょうがない。病気は治らないかもしれないけど、自分が生きていく上で必要なこと」と受け入れると痛みも軽くなっていた。
さまざまな治療を試す中、ボディーワーク「フェルデンクライス・メソッド」を始めた。物理学者が足を悪くしたのをきっかけに創始。骨格など身体構造を踏まえ、より少ない力で楽に動くことを目指す。たとえば仰向けに寝て頭を動かすと背骨や股関節、足の裏はどうなるか意識する。「つながりの中で動いている。人間関係も一緒だな。つながりのなかで動けば楽」と気づいた。
一緒に練習しようと声を掛けてくれた桐山日登美さんと座ったまま踊るスタイルを模索し、ダンスグループ「むゆうじゅ」を結成。当初は舞台袖から両脇を抱えられて椅子に座ったが、少しずつ回復し、歩けるようになった。「むゆうじゅ」では詩、せりふを口にしながら踊る。俳優時代の経験が生きた。般若心経の舞踊化にも挑戦。「インド舞踊、演劇、音楽と、ジャンルを超えた舞台が生まれたら」と語る。
できなくなったことよりも発見したことの方が多い。「病気は別に悪いことではないというのが一番大きな発見です」